就職に際し、就職先から支給される支度金は、本来、その就職に伴って転居のための旅行をするなどの費用を弁済する性格のものであり、その限りにおいては、その就職者に利益があったとは考えられず、所得税法上も非課税とされています(所法9 1.四)。

ただし、就職者に支給する支度金の額はその就職者が就職に際して支出する費用相当額を超える場合があります。

この越える部分の金額は、各目は支度金であっても、就職者が労務などの提供を約することによって支給を受ける契約金の実質を持つことから、その就職者の取得として課税関係が生ずることになります。

就職者が、その就職先との雇用契約に基づいて雇用後に受ける対価は原則として給与所得になりますが、この支度金は雇用契約を前提として支給されるもので、雇用契約そのものによって支給されるものではありませんから給与所得ではなく、また、一時に受けるものであっても、労務の対価たる性質がある以上一定所得でもなく、更に、委任契約や請負契約に基づいて受ける契約金のように事業所得としての性格もないところから、課税に当たっては、雑所得として取り扱われることになります(基通35-1(11))。