医療法人は、医療法第39条によって設立された法人をいいますが、これには社団と財団の2種類があります。
1. 社団医療法人
社団医療法人は、病院または診療所を開設することを主目的に集まった人の集合体で、社員の出資により設立されたものです。
2. 財団医療法人
財団医療法人は、病院または診療所を開設することを主目的に必要な資産を法人に無償で提供して設立された法人で、出資持分はありません。
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税金相談:医療関係者の方へ
医療関係者の方へ
昭和60年12月の医療法改正により、1人以上の医師が常時勤務する診療所でも、医業の非営利性を損なうことなく法人格を取得することができるようになりました。
一人医師医療法人制度の目的は、診療所の経営と医師個人の家計を明確に分離するとともに、医業の非営利性により配当を禁止して、剰余金は医療施設などの改善にあてさせ、それによって診療所経営の近代化の促進と組織の適正化を図るものです。
さらに、平成18年度医療制度改革により、非営利性の観点から、従来の出資による「持分あり医療法人」の設立は認められず、「持分なし医療法人」として、法人運営に必要な資産を基金に拠出することになりました。
一人医師医療法人は、法人として独立した人格を持ち、従来、個人事業主であった医師は、一人医師医療法人の役員に、家族従業員は役員または職員になることができますので、医師および家族従業員の給与所得には取得税・地方税が、一人医師医療法人の事業所得には法人税・地方税などが、それぞれ課税されます。
社員は法人存立の基礎をなすメンバーで法人の最高意思決定機関である社員総会の構成員であります。よって、従業員のことではありませんのでご注意ください。
社員となるべき資格の規定は存しませんので18歳以上であれば、社員になることができます。
総社員数は、原則として4名(理事3人と監事)以上が必要ですが、設立時の特例として知事の認可を受けた場合には、総社員数を3名(理事長、理事、監事)とすることができます。
しかし、一人医師医療法人であっても、診療所を複数開設する場合は、理事3人以上が必要です。
なお、法人の開設する診療所の管理者は、知事の認可を受けた場合を除き、すべて理事としなければなりません。
1. 役員(理事長・理事・監事)は社員であることが原則です。
2. 次のいずれかに該当する人は、一人医師医療法人の役員になることができません。
■医療法・医師法・歯科医師法その他医事に関する法令の規定により罰金以上の刑に処せられ、その執行を終わり、または執行を受けることがなくなった日から起算して2年を経過しない者。
■前号に該当する者を除くほか、禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、または執行を受けることがなくなるまでの者。
3. 理事長については、医学的知識の欠如による問題の発生を防止するため、医師であることが必要です。
4. 監事については、社員から選任しますが、職務の性質上、理事長の配偶者や子以外の方が適当だと思われます。監事は、当該医療法人の理事または職員を兼ねることはできません。
社員は、一人医師医療法人の構成メンバーで、出資者が社員総会の承認を得て、その身分を取得することになります。社員は、出資持分・議決権および選挙権を有するとともに、退社し、または法人が解散した場合は、持分に応じて払戻しまたは分配を受けることができます。
なお、社員は、社員総会の決議の関係上、3人以上とすることが必要です。また、社員は株式会社での株主ですので、従業員をいうものではありません。
理事は株式会社の取締役であり、労働者ではありません。よって報酬が勤務時間に比例するものではありません。
理事として医療法の定める職務を履行した場合は理事報酬の支出をすることは認められます。
法人税法上も職務の内容などに照らして不相当に高額とならなければ損金と認められます。
1. 資産については、病院を開設する医療法人の場合は、安定性および継続性を確保するため、総資産の20%以上の自己資本を有することが必要ですが、診療所を開設する医療法人には、このような定めはありません。この取扱いは、昭和61年6月27日から施工となっています。
医療法人の土地・建物などについては、法人自体の資産であることが望ましいわけですが、賃貸借契約が長期間にわたり、かつ確実な場合は賃借でも問題はありません。
2. 一人医師医療法人を設立する場合には、最低2ヶ月分以上の運転資金をもつことが必要です。
設立に際して理事長は、基金拠出総額の50%以上を拠出する必要があります。
なお、基金拠出については、医業費用2か月分以上の運転資金または1,000万円のいずれか金額の高い方を現金拠出します。
なお、基金に対する拠出には法人の安定運営を損なわぬよう、返還について一定の制約があるほか、利息をつけることができません。
(大阪府では、基金の拠出者については、医療法人設立時においては監事を除く設立者に限定されている)
不動産所有者の了承のもとに一人医師医療法人が引き続き賃借することは可能です。
従来の個人との賃貸借契約は、一旦終了させ、新たに所有者と一人医師医療法人との間で賃貸借契約を締結することが必要です。
1. 会計年度は、定款で自由に決めることができます。ただし12ヶ月を超えることはできません。
2. 決算は、会計年度終了後2ヶ月以内に行い、財産目録・賃借対照表および収支計算表を作成することが必要です。そして決算は、監事の監査を経て、社員総会の承認を得、知事に届け出るとともに所轄税務署長などに法人税などの確定申告書を提出します。
医療法人は、一人医師医療法人を含め医療法により、剰余金の配当が禁止されています。
したがって、一人医師医療法人は出資した社員に対し、出資額に応じた利益配当を行うことはできず、この点が、株式会社などの営利法人と著しく異なっています。
都道府県医師会または郡市区医師会では、一人医師医療法人の制度・税制・手続きなどについてご相談に応じ、説明・指導ができるよう相談窓口を設けていますのでご相談ください。
一人医師医療法人は、登記所に設立登記することによってはじめて成立します。したがって、医療法人の設立の許可があった場合は、必ず次により設立登記をすることが必要です。
なお、個人開業医が、一人医師医療法人に組織替えした場合は、従来、個人が開設していた診療所は廃止となり、新たに法人による開設となりますので、一人医師医療法人の設立登記終了後速やかに知事(保健所)に法人診療所開設許可申請を行い、許可を受けた場合は、10日以内に知事(保健所)に法人診療所開設届および個人診療所廃止届を出すことが必要です。
また設立登記終了後遅滞なく医療法人設立登記完了届を知事に提出することが必要です。
1. 一人医師医療法人の設立登記は、設立認可のあった日(知事の認可書の到達した日)から2週間以内に主たる事務所の所在地を管轄する登記所に、理事長が登記を申請しなければなりません。
2. 申請しなければならない事項は、次の事項です。
(1)目的および業務
(2)名称
(3)事務所の所在地
(4)理事長の住所および氏名
(5)存立時期または解散事由を定めたときは、その時期または事由
(6)資産の総額(純資産額)
3. 登記申請書に添付する必要書類は、次のものです。
(1)定款
(2)理事長の資格を証する書面
(3)設立認可書
(4)資産の総額を証する書面
(5)代理人によって申請する場合は、代理人の代理権限を証する書面
代理人(司法書士)に依頼するときは、委任状が必要となります。
なお、設立登記にあたっては、当該医療法人の代表者である理事長の印鑑を同時に登記所に届け出る必要がありますが、その印鑑を押捺します。
一人医師医療法人(社団)は、医療法の規定により、
(1)定款が定めた解散事由の発生
(2)目的である業務の成功の不能
(3)社員総会の決議
(4)他の医療法人との合併
(5)社員の死亡
(6)破産
(7)設立認可の取消し
以上があった場合は解散することになります。ただし、目的である業務が不成功の場合または社員総会の決議による解散は、知事の認可を受けないとその効力が生じません。
書 名 | 一人医師医療法人 [設立と税務の実際] |
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著 者 | 長 隆 |
出版社 | 日本医事新報社 |
書 名 | 一人医師医療法人認可申請の手引き(20年7月) |
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著 者 | 大阪府医師会 |
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